OSIモデルの物理層(Physical Layer)は、7階層のネットワーク通信モデルの最も基底に位置する層です。物理層は、データの電気的および物理的な送受信を扱うことに特化しています。つまり、ビットストリームの転送を物理的な媒体を介して行うための手段と規格を定義しています。以下に物理層の主な機能と特性を挙げます。
物理層の機能
- ビット伝送: データをビットの形式で伝送します。この層は、単純に1と0を物理媒体上で表現するための手段を提供します。
- 物理媒体とインターフェース: ケーブル(同軸ケーブル、ツイストペアケーブル、ファイバーオプティック)、無線リンク(Wi-Fi、Bluetoothなど)、そしてそれらを接続するためのインターフェース(コネクタ、ハブ、リピーターなど)の規格を定義します。
- ビットレート制御: 送信するビットの速度(ビットレート)を制御します。
- 同期: データの送受信におけるビットのタイミングを合わせます。
- 回線設定: ポイントツーポイント(一対一の接続)やマルチポイント(一対多の接続)といった物理的なネットワーク構成を扱います。
- シグナリング: ビットを物理媒体に変換する方式(シグナリング方式)を定義します。
- データの変調: デジタルデータをアナログ信号に変換する(変調)、またはその逆(復調)を行います。
物理層の特性
- ハードウェア指向: 物理層は、ソフトウェアではなく、ハードウェアデバイスとその特性に焦点を当てています。
- 透明性: 伝送されるデータの内容には関与せず、ビットの伝送のみを行うため、上位層がどのようなデータを扱っているかには無関係です。
- 単純性: 物理層は他の層と比較して比較的単純な機能を提供しますが、ネットワークの基礎を形成するため非常に重要です。
物理層は、データリンク層(OSIモデルの第2層)と直接対話し、データリンク層がフレームとして整理したデータをビットの形で伝送し、受信します。物理層は具体的な物理媒体を通じた通信の実現を目的としているため、ネットワーク構築におけるケーブルの選定や電気信号の仕様を決定する際に考慮されます。